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重点継続課題

労働・社会政策

国際的な公正労働基準の順守と人権尊重の推進

ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメント」を禁止するための条約(第190号)の国内批准が可能となるように法整備を進める。また、ILO中核的労働基準10条約のうち未批准の第111・155号条約の早期批准に向けた検討を行なう。

サプライチェーン等における日本企業の人権を尊重する取り組みを進めるため、政府が策定した人権デュー・ディリジェンスの実施に関する企業向けガイドラインの周知強化や好事例の発信、社会的機運の醸成を進める。また、サプライヤーに対しリスク評価を実施する際の費用負担や情報収集および人権確保のコストを含む発注のあり方について、ガイドラインにおいて考え方を示す。

さらに、労働組合が参画して産業別ガイドラインの策定を進め、産業別の苦情処理メカニズムの設置を検討する。

企業規模を問わず人権デュー・ディリジェンスの取り組みが推進できるよう、「ビジネスと人権」ポータルサイトの内容の拡充をはかる。

現行のビジネスと人権に関する国別行動計画(2020-2025年)の見直しに先立ち、政府ガイドラインに基づく企業の取り組み状況を確認・評価し、ステークホルダー参画のもと、人権デュー・ディリジェンスの法制化に関する議論を開始する。

<背景説明>

2019年のILO総会で「仕事の世界における暴力とハラスメント」についての条約(第190号)が採択された。日本では2019年6月に職場のパワーハラスメントに関する法改正がされたが、ハラスメントを禁止事項としていない点や行為者あるいは被害者の範囲が限定されるなど、条約を批准できる内容を満たしていない。したがって、国内批准が可能となるよう法改正を進める必要がある。

また、ILOの中核的労働基準は、2022年のILO総会で「安全で健康的な労働環境」が追加され、5分野10条約となった。これら10条約(※1)のうち、日本が未批准であった強制労働廃止についての105号は、2022年7月に批准が実現した。差別待遇(雇用・職業)についての111号および職業上の安全及び健康に関する155号について早期の批准に向け取り組むことが必要である。特に、ILOの「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」が2017年に改定され、勧告対象の範囲が、多国籍企業のビジネスパートナー(サプライチェーン)まで拡大された。加えてTPP (包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定)や日EU経済連携協定の中に、ILOの中核的労働基準の順守が盛り込まれており、国内外でサプライチェーンを含めた労働基準の順守が求められている。

さらには、1号(1日8時間・週48時間制)をはじめ、47号(週40時間制)、132号(年次有給休暇1年勤務につき3労働週、分割した場合でも最低連続2労働週)、140号(有給教育休暇)など、日本は労働時間・休暇関係の条約を一本も批准しておらず、批准に向けた取り組みが求められる。

欧米では、サプライチェーン等に対する人権デュー・ディリジェンスの義務化が進み(※2)、日本でも、政府や産業別ガイドラインの策定が行われるなど(※3)、企業に人権尊重を求める動きが加速している。特に、適用対象企業の基準を大幅に引き上げる等の修正がなされたものの、2024年3月にEU理事会が企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案の検討を進めている。

とりわけ、人権デュー・ディリジェンスについては、サプライチェーン等におけるILO中核的労働基準の尊重や、労働組合の関与を前提とした実効性ある取り組みの推進が重要である。ついては、2025年の「ビジネスと人権」に関する日本政府の国別行動計画の改定を見据え、日本政府のガイドラインに基づく企業の自主的な取り組み状況を確認し、低調な場合は法制化も念頭に検討を行うなど、具体的なフォローアップが必要である。

加えて、自社のサプライチェーン等における人権リスクを把握・防止するため、サプライヤーへの監査等を実施する企業の急増が想定されるなか、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の趣旨に照らし、発注側、受注側が対等な立場で人権確保の取り組みが行えるよう、監査や費用負担の適正な在り方の提示が必要である。

また、企業規模や人的・財政的リソースの違いによらず人権デュー・ディリジェンスに取り組めるよう、公的なポータルサイトで各国の関連法令や国別・産業別人権リスクの最新情報を参照できるようにするなど、政府による実用的な情報提供の拡充も求められる。

なお、多国籍企業のサプライチェーン上の諸課題に関して労使の取り組みを定めるグローバル枠組み協定(GFA)については、「OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」においても、デュー・ディリジェンスを実施する上で有効な仕組みとされており、好事例としての周知が必要である。

また、アパレル産業で先行して取り組みが進んでいるサプライヤーリストの公開についても、情報開示の質を高め、サプライチェーンの透明化に資する取り組みであり、好事例としての発信が効果的である。

※1 ILOの中核的労働基準10条約

結社の自由・団体交渉権の承認 結社の自由および団結権の保護に関する条約(87号)
団結権および団体交渉権についての原則の適用に関する条約(98号)
強制労働の禁止 強制労働に関する条約(29号)
強制労働の廃止に関する条約(105号)
児童労働の禁止 就業の最低年齢に関する条約(138号)
最悪の形態の児童労働の禁止および廃絶のための即時行動に関する条約(182号)
差別の撤廃 同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(100号)
雇用および職業についての差別待遇に関する条約(111号)
安全で健康的な労働環境 職業上の安全及び健康に関する条約(155号)
職業上の安全及び健康促進枠組条約(187号)

※2 人権デュー・ディリジェンス法制化の状況

アメリカ カリフォルニア州サプライチェーン透明法(2010年)
イギリス 現代奴隷法(2015年)
フランス 企業注意義務法(2017年)
オーストラリア 現代奴隷法(2018年)
オランダ 児童労働デュー・ディリジェンス法(2019年)
ドイツ サプライチェーン・デュー・ディリジェンス法(2023年)
EU EU理事会が企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令案を検討(2024年3月)

※3 日本政府・労働組合・業界団体の動き

2020年3月 電子情報技術産業協会 「責任ある企業行動ガイドライン」策定
2020年10月 日本政府 「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)策定
2021年12月 日本経済団体連合会 「人権を尊重する経営のためのハンドブック」策定
2022年7月 日本繊維産業連盟 「責任ある企業行動促進に向けたガイドライン」策定
2022年9月 経済産業省 「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」策定
2022年8月 金属労協 「人権デュー・ディリジェンスにおける労働組合の対応ポイント」策定
2022年12月 UAゼンセン 「サプライチェーン等における企業の人権尊重の推進に向けたUAゼンセンの取り組みについて」策定
2023年8月 連合 「ビジネスと人権に関する連合の考え方」策定
2023年11月 日本百貨店協会 「百貨店の人権デューディリジェンスの手引き」策定
2023年12月 農林水産省 「食品産業向け人権尊重の取組のための手引き」策定