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重点継続課題

産業政策

革新的な医薬品・医療機器等を創出し、良好なアクセスと安定供給を支える制度の構築

革新的な医薬品・医療機器等を生み出し、確実な安定供給が実現できるよう、薬価・材料価格制度の抜本的な見直しを推進するとともに、薬事等にかかる各種規制の緩和、国際調和を推進する。

イノベーション促進の観点からは、シンプルに特許期間中の価格を維持する薬価・材料価格制度へとさらなる見直しをはかる。また、ビッグデータやAIの活用を念頭に、産官学連携事業をこれまで以上に推進する。さらに、研究開発人材の確保・育成の観点から、産官学での人材交流の支援および基礎研究に対する研究費拡充や研究員に対する給与・待遇改善のサポート等の仕組みの導入を検討する。

グローバルに競争力のある人材を確保し、さらなる投資を呼び込むイノベーションエコシステムの育成に向けて、公的投資の拡充や各種支援制度の充実をはかるとともに、研究開発税制のさらなる拡充を検討する。

安定供給の観点からは、必要な設備・人材投資をはかりつつも不採算に陥ることのない薬価・材料制度へと見直す。また、原薬・原材料等の国内生産・供給体制に向けた必要な財政支援や税制を導入するとともに、薬価制度の根幹である個々の医薬品の価値に基づく適正な市場実勢価格の形成を実現するために、流通改善ガイドラインの実効性を確保するとともに、取り組みを推進する。

<背景説明>

〇各種制度の見直し

2023年に再び実施されることとなった中間年改定は、十分な議論がなされないまま、財政影響を重視した改定となるなど、企業の予見性を大きく損ねることとなった。今後、国内研究開発投資を萎縮させ、ドラッグラグ・デバイスラグ(※)の再発を招くとともに、合理化等による人材流出によって、創薬国としての基盤そのものが失われることが懸念される。

企業が継続的に研究開発投資を行い、優れた製品を生み出すことができるよう、薬価改定ルールの検討やイノベーションを適切に評価できる仕組みの再構築が必要である。

また、度重なる価格の引き下げによって、採算ラインを割るケースも少なからず発生している。万が一にも安定供給に支障をきたすことのないよう、必要な医薬品や保険医療材料について、不採算におちいる前に価格を下支えする制度の見直しが必要である。

中間年改定については、コロナ禍で改めて顕在化した日本の医薬品産業が抱える課題、さらにはその影響について中医協にて十分に議論、精査したうえで、通常改定とは異なる改定であるという認識のもと、著しく価格乖離が大きいもののみを対象とするなど、今回の中間年改定からは抜本的に見直すべきである。また、費用対効果評価制度は、必要な医薬品や医療機器への患者アクセスを阻害することのないよう、総合評価に患者の視点や意見を反映するとともに、保険償還の可否判断に用いるべきではない。さらには、医薬品の多様な価値を評価する新たな切り口である「公的介護費や生産性損失」について、どのような費用をどの程度含めるのかについてのガイドラインを策定するなど、早期に導入すべきである。

※ドラッグラグ・デバイスラグ:海外で開発され使用されているドラッグ=医薬品やデバイス=医療機器が日本で承認されるまでに生じる遅れや時間差のこと。

〇産官学連携事業の推進、イノベーションエコシステムの構築

イノベーション促進の観点からは、ビッグデータの構築、利活用に向けた基盤整備等が求められており、関連法規の整備や中長期の視点に立った産官学連携事業の推進が必要である。

また、医薬品、医療機器、先端医療技術(再生医療等)、先制医療をはじめ世界をリードする日本発・世界初のイノベーションを生み出すには、アメリカのボストンやケンブリッジのように投資やベンチャー企業、グローバル人材を呼び込めるエコシステムの形成が不可欠である。現状、我が国の拠点整備は関西イノベーション国際戦略総合特区や民間主導の湘南iParkなど極めて限定的であり、公的投資(政府支出)の大幅な拡充や各種支援制度の恒久化を通じた国際競争力の強化が求められる。

また、研究開発のあり方が垂直統合型から水平分業へとシフトしつつあり、創薬や医療機器開発にかかるイノベーティブな人材の育成や確保といった観点からもエコシステムにかかる支援が必要である。

〇産官学での人材交流の支援

企業とアカデミア、関係省庁等の間での人材交流は、多様な研究者が力を発揮するオープンイノベーションのきっかけとしても重要である。企業とアカデミアとの間での人材の相互受け入れにかかる支援制度の構築や産官学での人材交流の枠組みの設置について検討する。

〇ポスドクの処遇改善および研究開発環境の整備

我が国の大学等のアカデミアには、正規の研究ポストが少なく、収入面も含め、研究者としてのキャリアが描きづらい実態がある。アカデミア・研究機関における基礎研究に対する研究費拡充や研究員(特にポスドク)に対する給与・待遇改善のサポート(アカデミア等の研究活性化)等の仕組みの導入について検討する。

〇研究開発税制のさらなる拡充

創薬の成功確率は極めて低く、その開発には長い年月と多額の費用を要する。我が国は世界で数少ない新薬創出国であるが、モダリティの多様化もあり、創薬のハードルは年々高まっており、国際競争力を維持し、さらに高めるためには、上述の創薬エコシステムの構築に加え、税制等の支援措置をさらに拡充すべきである。

今般、拡充・延長されることとなった研究開発税制が、企業の研究開発投資にどのような影響をおよぼしたのか検証したうえで、日本国内における研究開発投資、とりわけオープンイノベーションが促進されるよう見直しを検討すべきである。 具体的には、公的研究機関または大学等への委託研究に関する支出金額200%計上、控除上限の撤廃、試験研究費の対象範囲の拡大などの企業の行動変容を促すための制度の拡充を行うべきである。 

〇流通改善の取り組みの推進および国内生産供給体制の整備

流通改善ガイドラインのもと、流通改善の取り組みが力強く進められてきたが、今般の新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療機関等の価格引き下げ圧力が高まったこと、さらには一部メーカーのGMP違反に端を発する医薬品の供給不安にともなう需給調整業務がひっ迫し、対応に忙殺されていることもあり、流通改善の取り組みが大きく逆行しているとの声がある。

「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」において、ガイドラインに基づく取り組みの進捗を定期評価するとともに、中間年改定の影響等の実態把握に努めたうえで必要な指導、対策を講じるべきである。

また、安定供給の観点からは、度重なる薬価引き下げの影響もあり、原薬や原材料の確保を安価な海外サプライヤーに依存する傾向が高まり、結果的に品質に起因する供給不安が頻発している。また、コロナ禍にともなうグローバルサプライチェーンの混乱によって供給不安も発生している。国民の健康確保や安全保障の観点からも、医療上必要性の高い医薬品や保険医療材料の原薬・原材料については一定の割合において、国内で生産・供給できるよう、薬価制度の見直し、さらには設備投資にかかる支援を拡充すべきである。