まみに聴かせてキャンペーン
まみに聴かせてキャンペーン

あなたの気になるキーワードを入れてください。
キーワード(カスタマーハラスメント、年収の壁など)でUAゼンセンの活動・政策を検索できます。

UAゼンセン重点課題

産業政策

不公正な取引慣行の改善

商品やサービスの価値に見合った価格で購入する経済活動への転換をめざし、人件費や原材料・エネルギーコストの上昇分を価格転嫁につなげられる実効性ある取引環境の整備を行う。特に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知を徹底し、長年の商習慣を見直すことや、適切な価格転嫁を社会全体で受け入れる意識醸成をはかる。

また、独占禁止法と下請法の運用強化、や大規模小売業告示や物流特殊指定、下請ガイドラインの周知を徹底する。下請Gメンによる取引の実態把握を加速させるとともに、自主行動計画を策定していない業種団体の策定促進と改善が進んでいない業界における不公正な取引慣行の改善を推進する。とりわけ、繊維、印刷、医薬、食品、トラックの業界について改善に向けた対応を求める。

パートナーシップ構築宣言については、その周知や登録促進に加え、働き方改革にともなう大企業から中小企業への無理な発注などのしわ寄せ防止のため、関係省庁が密に連携し、情報共有と適切な対応を行う。

また、サプライチェーン等における労働者の権利確保や、付加価値の適正配分に資する取引活動の推進にむけて、人権デュー・ディリジェンスの周知啓発や取り組み支援を強化する。特に、中小企業の取り組み環境を整備するため、課題を確認し必要な対策を講じる。

<背景説明>

法定最低賃金の引き上げや昨今の原材料コストの上昇を踏まえると、下請け企業や中小企業の賃上げ原資を確保するには賃金や原材料コストの上昇分を価格転嫁につなげられる取引環境の整備が不可欠である。

中小企業庁は毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」とし、価格交渉を促す啓発活動や、価格交渉や価格転嫁に関するフォローアップ調査を実施し、対応が良くない発注側企業に下請中小企業振興法に基づく指導や助言を実施している。また、取引調査員(下請Gメン)を配置して下請中小企業を訪問し、ヒアリング調査を行っている。「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の活用や必要に応じて下請Gメンの更なる増員をはかり、取引の実態把握ならびに不公正な取引慣行の改善を強く進めるべきである。

取引慣行の改善に向けては業界団体が策定した「自主行動計画」が各企業において実施されることが必要であるが、立場の弱い中小の下請企業は、取引慣行の改善を発注元に求めにくいのが実情である。個別企業のみならず関係業界団体が主導的に、不公正な取引慣行の改善を進めるべきである。

サプライチェーン全体の生産性向上の取り組みを推進し、持続可能な関係構築をめざすことを目的とした「パートナーシップ構築宣言」の促進をはかる必要がある。

働き方改革にともない、大企業が中小企業に無理な発注などを行うしわ寄せ防止の対策が必要である。公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省など関係省庁による密な情報共有と必要な対策が求められる。

サプライチェーン等における人権尊重の取り組みは、日本においても、2022年7月に日本繊維産業連盟、同年9月に経済産業省がガイドラインを策定し、2023年12月には農林水産省が食品産業における人権尊重の取組のための手引きを策定するなど、具体的な動きが加速している。 企業による人権尊重の取り組みと、公正な取引慣行の実現には密接な関係があり、前述のガイドラインも、取引先との協働による取り組みや、発注側に対し、自らの取引活動が取引先の人権へ与える負の影響の有無について確認するよう示している。

その具体的な実施プロセスである人権デュー・ディリジェンス(※)については、ガイドライン等の周知・拡充や、取引先との協働事例の発信等による機運醸成と共に、国内ビジネス中心で、リソースや情報の限られる中小企業も十分な取り組みを行えるよう、対策を講じる必要がある。

※企業が、自社の事業活動に関係した権利侵害がおきないよう、ステークホルダー(利害関係者)との対話により、サプライチェーン等の関係企業と協働して人権の状況を点検し、人権侵害の予防・撲滅に継続的に取り組む仕組み。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)が、企業の責任として、その実施を定めている。

[業界ごとの課題]

・繊維業界:自主行動計画を作成し率先して取り組んでいるが、川上から川下まで多段階に分業化されており関連する企業も約1万社に上る。そのため、すべての企業に自主行動計画を浸透させるには、関係業界団体の強いリーダーシップが必要である。

・印刷業界:関係業界団体が2022年3月に自主行動計画を作成。下請構造が顕著な業界でもあり、自主行動計画を踏まえた取引慣行の改善を進めることが必要である。

・医薬医療機器業界:厚生労働省より発出された流通改善ガイドラインに基づく取り組みが進められているが、一部において、過大な値引き要求、頻繁な価格交渉、在庫調整を目的とした返品などの課題が継続している。医薬品や医療材料は、薬価や技術料等の公定価格が決まっているため、実質価格転嫁が不可能である中、古くからの取引慣行や力関係を背景に特にメーカーや卸の利益を圧迫する構造が顕著となっている。引き続き、取り組みの進捗を定期評価したうえで必要な指導、対策を講じるべきである。

・食品業界:UAゼンセンとフード連合による調査で、依然として営業現場で不公正な取引が行われている実態が浮き彫りになっている。①優越的地位の濫用行為について小売業者に対し適正な改善と法令順守の徹底を指導すること、②優越的地位の濫用行為に対する告発者を保護し報復行為が行われないよう監視を徹底すること、③大規模小売業告示について、小売業者のみならず納入業者にも周知を徹底することが必要である。

・トラック業界:口頭での契約(受注)があたり前、荷主先での付帯作業(荷積み・荷下ろし作業等)や荷待ち時間等が発生し、適正金の収受さえも行われていない状況である。国土交通省が「トラック運送業における書面化ガイドライン」を作成し、実運送業者と荷主のとの間で業務の範囲や運送条件等、重要事項の書面化を進めているが、ガイドラインであるため実効性が弱い。改善に向けては書面化を義務化することが必要である。