
UAゼンセン重点課題
労働・社会政策
継続的な賃金引き上げを実現できる環境整備の推進
物価上昇と生産性向上に見合う賃上げがすべての職場で持続可能な形で実現できるように、労務費を含めた適正な価格転嫁の促進および中小企業の価格転嫁力強化(監視強化を含む)による適正取引の推進やエネルギーコストの抑制策の強化(再生可能エネルギーの普及促進や省エネ技術導入支援を含む)、賃上げ促進税制や助成金等の対象拡充と実効性の向上、企業の人材投資・リスキリング促進やデジタル化支援を通じた生産性向上に資する支援拡大などの環境整備を進める。また、社会保険料の減免や税制優遇措置を活用し、企業の賃上げを後押しする施策を検討する。
2024年度以降も消費者物価は2%前後の上昇が見込まれており、実質賃金の回復・上昇を伴う持続的な賃上げの定着が社会全体の課題となっている。1990年代以降、日本企業は長らく人件費抑制を優先し、ベースアップを伴わない定昇中心の賃金体系が定着してきたが、近年の人手不足、インフレ、グローバル競争の激化により、構造的な賃上げが求められている。
特に中小企業は全就労者の約7割を抱えながら、価格転嫁力や生産性の面で大企業に劣る傾向があり、持続的な賃上げ実現には、公正な取引慣行の確立、価格交渉力の強化、生産性向上を通じた構造的支援が不可欠である。
政府が2023年に策定した「労務費の適切な転嫁のための指針」は一定の前進であり、加えて賃上げ促進税制の拡充やリスキリング支援、再エネ導入補助などの複合的施策により、企業の賃上げ余力の底上げが求められる
電気・ガス価格や原材料コストの高騰は中小企業のコスト構造を圧迫しており、政府による価格高騰対策(重点交付金・激変緩和措置)の継続と拡充、再生可能エネルギーの普及促進など、長期的なコスト構造の転換支援も必要である。今後のエネルギー価格が、企業の賃上げ原資確保への見通し等を阻害しないよう、エネルギー価格の変動を踏まえた政府支援のさらなる拡充やトリガー条項の凍結解除など機動的な対策が必要である。
賃上げ促進税制については、控除率引き上げや要件緩和など一定の前進がみられるが、非課税企業への対応や赤字企業向けの支援強化も不可欠である。