
UAゼンセン重点課題
産業政策
万引き犯罪防止対策の強化(地方自治体にも要請)
小売業で働く労働者に大きな負担や不安を与え、小売業者に多大な損失をもたらしている万引きの抑止に向けて、実態の把握を行うとともに、被害届手続きの簡素化、罰金刑の厳格な運用等の必要な対策を講じる。常習犯など万引きの特性を検証し、再犯防止のための実効性ある対策を講じる。
万引きを社会的な問題としてとらえ、効果的な万引き防止対策の情報について地方自治体間で共有できる仕組みを構築し地域での活用を促進する。インターネットにおける盗犯品の売買を防止するため、疑わしい取引に関する通報システムの整備を強化する。
小売業等の防犯システム(防犯カメラや防犯バーの設置、防犯タグの導入等)の整備への支援を行う。
国内小売業の万引被害総額は年間4,615億円(万引防止官民合同会議発表推定値2010)、2022年度の刑法犯に占める万引きの割合は13.9%と増加傾向にある。また、全国万引犯罪防止機構による2023年度の推計値では、万引き被害額は3,460億円にのぼると推計されており、加えて万引きの被害単価を10,000円と仮定すると万引き件数は3,460万件に上ることとなる。2023年度の万引き認知件数は9万3,168件であることを踏まえると、実際の万引き件数の0.3%しか計上されていないことになる。こうした中、エコバック利用者の増加やセルフレジの急増、来日外国人被疑者による万引き被害の増加(日本人被疑者に比べて4倍以上)などを背景に、職場における万引き対応の負担は増加している。しかし、万引きの被害届の提出手続きにかなりの時間を要することから、事業者も警察も犯罪をしっかり処分することなく放免している実態も散見される。被害届手続きを簡素化し、罰金刑を厳格に運用するなど再犯防止につながる対策が必要である。また、万引き再犯の背景には、貧困、孤立、中毒なども指摘されている。それぞれの特性に応じた根本的な対策が求められる。
東京都(警視庁)では、警察、自治体、各業界団体、関係機関・団体等が相互に連携した取り組みを展開する「東京万引き防止官民合同会議」を設置し、万引き防止対策に向けた会議を開催している。会議では小売業協会やスーパーマーケット協会など約30の業界団体が参加し、万引き被害の情報を企業の枠を超えて共有する取り組みなどを行っており、参考にするべきである。また、万引犯罪が増加している背景にインターネットで万引商品を簡単に転売できる環境が挙げられる。そのため、疑わしい転売を警察に通報できるシステムの整備を進める必要がある。
小売業者等が設置する防犯カメラや防犯バーの設置、防犯タグの導入等のシステム整備は大きな負担となっている。国や自治体としても設置費用等を支援し、万引き防止を促進することが必要である。