まみに聴かせてキャンペーン
まみに聴かせてキャンペーン

あなたの気になるキーワードを入れてください。
キーワード(カスタマーハラスメント、年収の壁など)でUAゼンセンの活動・政策を検索できます。

UAゼンセン重点課題

産業政策

医療従事者および介護従事者の処遇改善と人材確保に向けた対策強化(地方自治体にも要請)

人手不足が著しい医療・介護従事者の処遇改善と人材確保を進めるために、診療報酬、介護報酬の引き上げを行うとともに、介護業種のICT化の推進や事務作業の簡素化等を推進する。
加えて、介護職については、公正な賃金決定と職種の魅力向上を図る観点から、既存の制度にとらわれず、介護分野にふさわしい賃金水準の設定が求められる。
そのために、介護報酬制度をはじめとする関連制度を議論するにあたり、介護職の賃金基準や支給ルールを組み込む仕組みの構築などを進めること。
また、介護労働のネガティブなイメージを払拭するために、行政・事業者・関係団体等と協働して介護労働の魅力を発信する広報活動を行う。さらに、介護分野への入職促進のために、介護職の公共職業訓練の拡充や潜在労働力の掘り起こしを行う。

<背景説明>

医療業界では、物価上昇により備品・消耗品・光熱費などの経費が増加しているものの、診療報酬という公定価格で医療サービスの価格が決められているため、医療機関が自由に価格転嫁することはできない。その結果、全国の医療機関では深刻な財政難に直面するケースが増えている。

2024年度の診療報酬改定では、看護職員やコメディカルの処遇改善分として0.61%、賃上げ税制を活用しつつその他の職種の処遇改善分として0.46%が加算された。一方で、入院時の食費基準額や処方箋料の見直しにより0.19%となり、全体としては0.88%のプラス改定にとどまった。また、新たな処遇改善策として「ベースアップ評価料」が導入され、政府は2024年度に2.5%、2025年度に2.0%の賃上げを目標に掲げた。しかし、2024年度の実際の賃上げ幅は2%程度にとどまり、他産業の大幅な賃上げと比べて大きく後れを取る結果となった。

この状況が続けば、医療業界への入職者が減少し、既存の医療従事者の離職が進むことで、医療保険制度の基盤が働き手の側から崩壊する恐れがある。

介護業界でも医療業界と同様、物価上昇の影響により経費の増加が経営を圧迫しているが、介護サービス料が公定価格で定められているため他産業のように自由に価格転嫁ができない。そのため、価格転嫁が進んだ2023年と2024年の他産業との賃金引き上げの差は2年間でおよそ5%発生し、介護業界から他産業への労働移動が発生している。

厚生労働省が公表している介護職員の必要数は、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人の介護職員が確保する必要があるとされており、2022年度の介護職員数約215万人から2026年度までに約25万人(年間6.3万人)、2040年度までに約57万人(年間3.2万人)増やす必要がある。しかし、介護業界の有効求人倍率は4.12倍(全産業1.25倍)、さらに訪問介護員においては14.14倍と高い水準で推移しており、人材不足により介護サービスを受けたくても受けることができないいわゆる介護難民が発生し、家族の介護のために仕事を辞めざるをえない介護離職に拍車をかけている。

そのような中、2024年4月に介護報酬改定が施行され、全体ではプラス1.59%の改定となったが、地域包括ケアシステムの要ともいえる訪問介護をはじめとする訪問系サービスの基本報酬は約2.3%引き下げられた。厚生労働省は一本化した介護職員等処遇改善加算の加算率を他のサービスよりも高く設定したため「基本報酬を引下げても事業収入全体では影響がない」としているが、2024年の介護事業者倒産件数(東京商工リサーチ調査)をみると、年間の介護事業者全体の倒産件数が過去最多の172件、訪問介護も過去最多の81件となり、基本報酬が引き下げられたことで事業継続を諦めたケースも倒産に拍車をかけている可能性があると報じられている。

このように、他産業との賃金格差や昨今の物価動向を踏まえると、日本国民が安心・安全の医療・介護を安定して受けられる人材確保を進めるために、すべての医療・介護労働者の継続的な処遇改善策の拡充を早急に行う必要がある。

こうした中、産業ごとの最低賃金を設定する特定最低賃金制度は、公正な賃金決定と職種の社会的価値を明確に示す制度として、繊維・小売などを中心に既に運用されており、企業間競争によって賃金が不当に抑制されることを防ぐ機能も果たしている。介護職もまた、エッセンシャルワーカーとして社会に不可欠な役割を担う職種であることから、地域別最低賃金を上回る水準で特定最低賃金を設定することは、職種の価値を適切に反映させるとともに、人材確保の有力な手段となりうる。

特定最低賃金は、労使双方の合意と申出に基づき、最低賃金審議会での審議を経て設定されるものである。そのため、特定最賃の新設や改定にあたっては、公労使三者による建設的かつ継続的な議論が必要不可欠であり、政府においてはそのための環境整備、すなわち情報共有、議論の場の設定、技術的支援などを積極的に推進することが求められる。

特定最賃の仕組みを活用することで、介護職の賃金水準が底上げされ、業界内外においても介護職の社会的地位と働きがいが明確に示されることとなり、ひいては持続可能な介護提供体制の確立にも資することが期待される。

また、介護現場に求められている事務作業が増加している実態があり、法令上、提出が必要な書類の見直しや、ICTを活用した事務作業の軽減(書類削減)を行い、介護従事者の業務を軽減する必要がある。

介護労働は、きつい仕事内容の割に賃金が安い、人間関係を理由とした離職率が高い、慢性的な人材不足による過重労働で休暇も取りがたい等、ネガティブなイメージが定着しており、人材確保の促進や介護事業の運営を阻害している。介護労働の魅力の発信について、行政・事業者・関係団体とも協働して積極的に社会に広報活動をしながら、義務教育課程における体験実習・施設見学の推進や学校の進路相談関係者に対するPR、マスメディアを通じたポジティブイメージの積極的な発信など、さまざまな角度からアプローチを展開していく必要がある。

介護業界への入職促進のために、潜在している労働力の掘り起しを目的としたセミナー等の開催等を実施し、介護の公的職業訓練の拡充も行う。また、介護従事者の公的保育施設の優先利用について検討することも必要である。