
UAゼンセン重点課題
産業政策
トラック・バス・タクシー運転者の労働環境改善と物流効率化の推進
2024年度施行の改正改善基準告示および改正労基法の実効性を高めるため、トラック・バス・タクシー運転者の長時間労働是正に向け、サプライチェーンを通じた周知を強化し、順守を徹底する。
特にトラックドライバーの労働環境改善のため、高速道路の大型車両向け駐車スペースの整備・拡充を進めるとともに、運行記録計の搭載を2トン車まで拡大し、中間輸送拠点の整備などを含めた働き方・休み方の改善を検討する。
また、物流効率化を妨げる高速道路の深夜割引制度については、運送業への適用時間帯の制限撤廃を求める。さらに、運転事故防止の観点から、未経験ドライバーへの安全教育を強化する。
加えて、トラックGメンの調査結果を活用し、荷主企業や元請業者への働きかけ・要請の実効性を高めるため、監視体制を強化し、適正な労働環境の確保を図る。
首都圏を中心とする高速道路の休憩施設では、駐車エリアの混雑に対し、駐車マスの拡充が進められている。しかし、大型車の駐車マス不足による混雑や一部のSA・PAに利用が集中する課題や、大型車マスに普通車が駐車したり本線合流車線に大型車が駐車したりするなどの不適切な利用実態がある。
高速道路管理企業は、普通車と大型車のどちらも利用できる「兼用マス」の整備や休憩施設の土地を活用した大型車マスの拡充、利用実態を踏まえた「平日休日の運用切替マス」の設置、ポスターや道路パトロールなどによる駐車マスの適正利用の呼びかけを行っている。それでもなお、トラック・バス・タクシー運転者の多くが「停まれない・休めない」環境を強いられているのが現状であり、運行中の安全確保や体調管理に深刻な支障をきたしている。
2024年4月施行の改正改善基準告示ではトラックドライバーの休息期間の延長や拘束時間の縮減など一定の改善がはかられたことを踏まえ、その順守をめざすためには、ドライバーの十分な休息による安全性確保のために必要な対策を早急に講じる必要がある。この際、IC近郊における駐車・休憩施設(トラックステーションや道の駅を含む)の整備も検討し、かつ高速道路利用料金も不利にならない運用と併せて講じる必要がある。なお、トラックステーションは近年閉鎖も相次いているが(2024年1月時点で全国23か所の設置)、働き方・休み方の観点からその整備についても改めて検討が必要である。
また、トラックの稼働状態を記録する運行記録計(タコグラフ)は現在、車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラックにその搭載が義務付けられている。こうした記録データは、拘束時間の可視化と長時間労働の抑制に資するものであり、2トン車を含めた小型トラックや白ナンバー貨物車も対象とし、事業種別にかかわらず運転者保護の実効性を高める必要がある。
ドライバーの労働時間・拘束時間は長く、また車中泊せざるを得ない場合もある業界であるが、日帰り可能な距離に中継拠点を設ける中継輸送により、従来車中泊が必要であった運行を日帰りとでき、ドライバーの拘束時間が大幅に削減されるという国交省の実証実験の結果も出ている。少子高齢化及び労働条件悪化によりドライバー数は急減していることから、中間輸送拠点の整備なども見据えつつ、ドライバーの働き方・休み方についても検討を行う必要がある。
ETCの深夜割引制度は、適用時間帯に合わせた運行を強いられることで、出入り口付近での滞留や無理な運転が発生している。トラック・タクシー等の運転者が時間に追われず安全な運行ができるよう、深夜割引の時間帯制限撤廃などの制度見直しを進める必要がある。
加えて、国土交通省と厚生労働省が連携して実施している「トラックGメン」による調査では、荷主・元請事業者からの過剰な待機や積載・荷下ろし指示などが依然として長時間労働の主因であることが指摘されている。この調査結果を活かし、荷主企業・元請に対する改善要請の実効性を高めるため、監視体制の強化と併せて、違反行為に対する罰則強化や改善命令制度の導入等も検討し、運転者の労働環境を抜本的に改善する必要がある。