UAゼンセン重点課題
地域政策
保育士の処遇改善と地域子育て関連事業の強化
保育人材の確保・定着によって保育の質を向上させるため、保育士の賃金水準引き上げや家賃補助等の住宅支援制度などによる処遇改善を進めるとともに、事務作業の簡素化を推進して保育士の職場環境を改善する。
さらに、国の保育士配置基準を上回る自治体独自の基準を設け、よりきめ細かな保育を実施する。
2025年度から5ヵ年の「子ども・子育て支援事業計画」の策定にあたり、地域の子育てに関するニーズを正確に把握するために適切な調査を実施する。特に、休日保育(大型連休も含める)や休日学童保育は、子ども・子育て支援事業には明記されていないが、ニーズがあれば実施することを含めて対応策を検討する。
保育園の潜在的待機児童解消のため、商業施設・事業所と連携し、事業所内保育所の設置拡充を推進する。
また、学童保育の受け皿拡大に向け、放課後児童支援員の処遇改善を図るとともに小学校施設や民間クラブ等の活用するなど、学童保育の支援を拡充する。
全ての妊産婦、子育て世帯、子どもに対して包括的な相談支援を行う「子ども家庭センター」の設置を進める。
園児や児童の交通安全確保に向け、内閣府・厚生労働省連名通知「キッズ・ゾーンの設定の推進について」(2019年11月12日)に基づき、キッズゾーンの設置や国交省と警察庁の取り組みである「ゾーン30プラス」の推進に加えて、警察・学校・行政・保護者による不審者情報の共有および児童等に対する交通安全教育を進める。
日曜・祝日や遅い時間帯に働く人たちは、休日保育や延長保育が実施されていないことで、子どもを持つことをあきらめる、あるいは、就業をあきらめる、また、子育て中であれば別の手段を選択するなどの対応をとっていると考えられるため、保育所入所児の親へのアンケート等では休日保育・延長保育を必要だとする声が挙がらない場合がある。地域の子育てに関する実態が反映されるよう適切な保育ニーズ調査を実施し、実情に即した保育サービスを展開していくことが必要である。
特に、働きながら子育てを行う人たちの支援に向けては、休日保育、夜間保育、病児・病後児保育、企業事業所内保育施設、休日学童保育等の整備が重要である。地域子ども・子育て支援事業に休日保育・休日学童保育を明記し整備するとともに、休日保育・休日学童保育が実施されていない地域において、何らかの手段で子どもを預けて就労した場合の費用の補助制度の創設や企業が事業所内保育施設を整備する際の助成制度や相談窓口を創設・拡充することが必要である。病児・病後児保育については、不足している施設を補う取り組みとして、隣接する自治体間の広域連携を活用した取り組み事例がある。東京都町田市・八王子市、および、神奈川県相模原市・川崎市の4市は、域内住民の利便性向上をめざして、いずれの住民も4市が提供する病児・病後児サービスの利用を可能とする広域利用協定を結んだ。
また、「子ども家庭センター」の設置に向けては、地域密着型の子ども関連施策(児童相談所、子ども食堂、放課後児童クラブ、児童館、保育施設、幼稚園、ダブルケア支援等)との連携・協働を進めて、子どもに関わるあらゆるサービスを切れ目なくワンストップで提供できる体制を整える必要がある。
保育士の処遇改善については、現在、国として対応をはかっていくこととなっているが、処遇水準の高い都市部への保育士の流出が問題となっている地域等においては、地方自治体においても処遇改善策が必要である。一方、国は都道府県・市町村の好事例を集約し公表するなどの支援を行う必要がある。また、公立と私立の保育所間や県をまたぐ近隣都道府県や市町村間の保育士の処遇格差の是正に向けて、さらなる実態調査と予算措置等を行う必要がある。
休日保育を含めた保育環境の整備や保育の質の更なる向上を図るためには、何よりも保育人材の確保・定着が重要である。そのためには、保育士の処遇改善等加算の対象事業範囲の見直しと保育士配置基準の見直しが必要である。保育士の配置基準(※1)については、一部の年齢で見直しが図られることとなった(2024年4月~)。3歳児は、「20人に1人」から「15人に1人」へと、4歳児・5歳児は、「30人に1人」から「25人に1人」へと配置基準が変わることとなったが、0歳児から3歳児の配置基準については見直しの対象に含まれなかった。一方、自治体によっては、よりきめ細かな保育を実施するために国の基準を超える独自の配置基準を定めている自治体もあるが(※2)、保育サービスの地域間格差の解消及び保育の質の更なる向上に向けて、国の0歳児から3歳児に対する配置基準の見直しは急務である。また、ICT等を活用した事務作業の簡素化も必要である。加えて、子育て支援員の増員をはかる必要がある。子育て支援員は、研修を受ければ無資格でも子ども子育てに関わる仕事に就ける(市町村単位)ことから、官民の連携により子育て支援を広げていくことが可能となる。
また、切れ目のない子育て支援として、「小1の壁」への対応が必要である。小学校の放課後児童対策としては、学童保育の役割が極めて重要となるが、学童保育を利用できなかった児童数(待機児童数)は16,276人(2023年5月時点)にのぼる状況にある。国が定める運営基準(1クラス40人)を守りながら受け皿を拡大する対策が急務である。
保育中の子どもの事故が相次いでいることを受け、厚生労働省が保育施設周辺の道路で運転手に注意を呼びかける「キッズゾーン」、及び、国土交通省と警察庁の連携による「ゾーン30プラス」(最高速度30km/hの区域規制であるゾーン30と物理的デバイスとの適切な組み合せにより交通安全の向上をはかる取り組み)の設置を推進し、地域における子どもの安全を確保していく必要がある。また、警察・学校・行政・保護者による不審者情報の共有および児童等に対する交通安全教育を推進し、地域全体で子どもを見守る体制の整備が必要である。
※1 保育士の配置基準:0歳児3人に対し保育士1人、1~2歳児6人に対し保育士1人、3歳児15人に対し保育士1人、4・5歳児25人に対し保育士1人。
※2 自治体独自の保育士配置基準例
年齢 | 国基準 | 横浜市基準 | 京都市基準 | 草加市 |
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0歳児 | 3:1 | 3:1 | 3:1 | 3:1 |
1歳児 | 6:1 | 4:1 | 5:1* | 5:1 |
2歳児 | 6:1 | 5:1 | 6:1 | 6:1 |
3歳児 | 15:1 | 15:1 | 15:1 | 15:1 |
4歳児 | 25:1 | 24:1 | 20:1 | 20:1 |
5歳児 | 25:1 | 24:1 | 25:1 | 25:1 |
*京都市:1歳8か月未満は4:1まで保育士を加配できるよう助成