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UAゼンセン重点課題

地域政策

万引き犯罪防止対策の推進

小売業で働く労働者に大きな負担や不安を与え、小売業者に多大な損失をもたらしている万引き防止に向け、官民による会議体を設置し、各組織が連携して万引きに関する総合的な対策を推進するとともに、事業者間で万引き事件やその対策に関する情報を共有化する仕組みを構築するなど必要な対策を講じる。

また、高齢者の再犯率が高い実態を踏まえて、福祉的及び医療的な観点からの対策を進める。

<背景説明>

国内小売業の万引被害総額は年間4,615億円(万引防止官民合同会議発表推定値2010)にも上る。近年、万引きの認知件数は他の犯罪同様に減少しているが、全刑法認知件数に占める万引き認知件数の割合は微増傾向にあり、2022年は13.9%となっている。また、レジ袋有料化によるエコバック使用の増加やセルフレジの急増など職場における万引き対応の負担はさらに強まっている。

NPO法人全国万引犯罪防止機構の「全国万引対策実態調査報告2020」によると、万引きの形態は「高齢者による万引きの増加」「組織的な大量窃盗」「インターネットを利用した盗品処分」など変化している一方で、官民で万引き対策を協議する組織は減少し活動を縮小している組織もある。

東京都(警視庁)では、万引きに関する総合的な対策を推進するため、警察、自治体、各業界団体、関係機関・団体等が相互に連携した取り組みを展開する「東京万引き防止官民合同会議」を設置し、万引き防止対策に向けた会議を開催している。会議では小売業協会やスーパーマーケット協会など約30の業界団体が参加し、万引き被害の情報を企業の枠を超えて共有する取り組みを行っている。

福島県では、化粧品や医薬品、衣料品等を複数名で大量に万引きする被害額1万円以上の「爆盗」が問題となっており、これを防止するため2019年2月に「ストアセキュリティふくしま防犯ネットワーク」を設立した。これは、ドラッグストアやスーパー、ホームセンター、衣料品店等、県内の31社510店舗が加盟して、発生した爆盗事件について、県警が加盟店舗に対し被害の概要や容疑者の特徴を電話やメール、ファックスで伝えて情報共有し、被害防止や犯人逮捕につなげる仕組みである。

高齢者の万引きについては、万引き検挙人員に占める65歳以上高齢者の割合が、2022年には42.1%となり、上昇傾向が続いている(警察庁「令和4年の刑法犯に関する統計資料」)。また、高齢者の万引きについては2012年以降一貫して再犯者が初犯者を上回り、2019年では再犯者は初犯者の1.4倍となっていることから(2022年6月10参議院法務委員会)、再犯防止に向けた対策が急務である。高齢者が万引きを繰り返す背景には孤独や貧困、病気の存在が指摘されており、自治体におけるきめ細かなサポート(※)が必要である。

[自治体におけるサポート事例]

  • 高崎市(群馬県):
    市内29か所に設置している高齢者あんしんセンターが地域に出向くことで、万引きなどの犯罪の一因となり得る生活困窮や認知症の悩みを抱えた高齢者を早期に発見することや、高齢者の孤立を防ぐ支援等を実施している。(2023年12月高崎市議会)
  • 岐阜県:
    万引き再犯防止に向けて、福祉と医療の2つのアプローチから対策を講じている。福祉的アプローチとしては、保護観察所や検察庁と連携し万引きをした高齢者を生活困窮者自立支援機関につなぎ、自立に向けた就労支援を行うほか、状況に応じて生活保護費の受給や老人ホームの入所手続き等を支援している。さらに2023年9月より、県内6か所に「自立更生者相談窓口」を設置し、保護観察を終了した人が社会から孤立して問題を抱え込むことがないように就労支援や住居支援などの相談支援事業を開始した。
    医療的アプローチとしては、依存症には専門的な相談と治療が必要であるとの観点から、県精神保健福祉センターと県内医療機関に依存症相談拠点および治療拠点を設け、依存症相談員の配置や医療スタッフへの研修を行っている。また、本人の依存症への気づきが難しいことや差別・偏見を恐れることで治療につながりにくい現状を踏まえて、刑務所や警察、県地域生活定着支援センター等に相談窓口や治療機関が掲載されたリーフレットを配布し、症状が疑われる場合には適切な相談・治療につなげていく取り組みを進めている。加えて、精神科医療機関、支援団体、警察等で構成する「岐阜県依存症地域支援機構会議」を設置し、事例や対応を共有するなど連携体制の強化に向けた取り組みを推進している。(2023年12月岐阜県議会)
  • 大分市(大分県):
    万引き予防に向けて、小売店等へのヒアリングを実施するとともに、内容に応じて福祉部門をはじめとした庁内関係部署や警察などの関係機関との情報共有を進めていくことが確認された。(2023年9月大分市議会)