
UAゼンセン重点課題
地域政策
医療および介護従事者の人材確保および処遇改善と事業者に対する支援強化 ●県、市(国にも要請)
安心できる医療と介護の体制確立のため、地域の現場実態の把握と検証を行った上で、自治体においても処遇改善に資する支援を推進する。
医療従事者(※1)の確保に向けては、看護師免許を所有しているものの、医療現場で就労していない潜在看護師が人手不足に拍車をかけている状況を踏まえ、医療従事者の復職支援を強化する。
また介護従事者(※2)の確保に向けては、潜在介護従事者の復職支援研修や介護資格取得に対する研修費補助・奨学金補助、介護従事者に対する住居費補助等の支援を強化する。
物価上昇による食材費・衛生用品費・光熱費・燃料費等の経費の増加が医療および介護事業者の経営を圧迫している。しかし、医療および介護業界では、収入の柱である診療報酬、介護報酬が公定価格で定められているため、他産業のように物価上昇分を事業者の判断で価格転嫁することができない。地域福祉の推進に重要な役割を担う医療および介護事業を継続的に発展させていくためにも、物価上昇を踏まえた医療および介護事業者に対する支援を強化する。
また、訪問介護サービスにおける基本報酬が引き下げれらたことで(令和6年度介護報酬改定)、事業継続に影響を受けている事業者も見受けられる。訪問介護事業者の経営状況等を調査し、実態に即した支援を展開する。
※1 看護職、リハビリ職、相談員、事務職(医療事務・病院事務等)、給食関連職、委託業者(医療事務・給食関連・清掃関連等)等、直接的に医療行為を行う者以外も含む
※2 介護支援専門員、福祉用具専門相談員、相談員、事務職、給食関連等、直接的に介護を行う者以外も含む
老後も安心して暮らしていくためには、持続可能な医療と介護の体制を確立することが必要であり、地域包括ケアの確立などの環境整備に向けた取り組みが必要である。診療報酬改定により、人材確保に向けた処遇改善項目が追加されたが、これまでの処遇間格差を考えると、処遇改善に向けた一層の取り組みが求められる。また、医療従事者の人手不足解消のためには、各自治体の処遇改善に向けた支援も不可欠である。
厚生労働省の第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量などに基づく介護職員の必要数についての公表では、高齢者数がほぼピークを迎える2040年度に必要な介護職員数を約272万人と推計している。一方で、全国の介護職員数は2023年度に約212万6千人で、前年度から2万9千人規模で減少し、介護保険制度が開始した2000年度以来、初めて減少に転じた。地域において、介護サービスを維持していくためには、介護人材の確保が急務の課題である。
介護人材の確保には、介護報酬の引き上げ等の処遇改善(賃金改善)のほか、自治体においても介護従事者(※1)の労働条件を改善するための対策を実行することが求められる(※2)。特に、大都市部周辺の地域については、介護従事者が処遇水準の高い都市部の施設に流出していることが問題となっており、これに歯止めをかけるためにも実効性のある対策を講じるべきである。
居住介護支援事業所の管理者は、原則、主任介護支援専門員(ケアマネージャー)であることが要件となっているが(※3)、その取得が進んでいない状況を踏まえ、各自治体においては地域医療介護総合確保基金などを活用し、資格を取得しやすい環境整備が求められる。
厚生労働省は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援のため、可能な限り住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしい暮らしを続けることができるよう、2025年を目途に、日常生活圏域(中学校区単位)での包括的な支援・サービス提供体制(※4)の構築に取り組んでいる。
介護離職を防いでいくためには、何よりも労働者が自ら生活する場における地域包括支援センターを認知し、アクセスする機会を増やしていくことが必要である。そのためには、センターと企業側との連携や、労働者への周知を強化していく取り組みが必要である。
※1 介護従事者には、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、相談員、事務職、給食関連等、直接的に介護を行う者以外も含む
※2 介護人材確保に向けた地方自治体の対策例:
・一関市(岩手県):
介護人材確保奨学金補助金…市内の介護サービス事業所で働く介護福祉士等で、資格取得のために奨学金を借り入れ現在返還している者に対し、奨学金返還額の補助金を交付。
・金ヶ崎町(岩手県):
介護職員就職支援助成金…町内介護サービス事業所に就労した介護福祉士、社会福祉士等に対し、就労時の支度金として10万円を交付。
・群馬県:
「ぐんま認定介護福祉士」という全国初の県独自認定制度を創設。介護福祉士にとっては、資格取得後にめざす上級の国家資格が無いことを踏まえて、県が介護福祉士に対する評価・処遇の指標を示すことで、介護福祉士の賃金引き上げや手当の追加などの処遇改善につなげた。
・埼玉県:
一度離職した介護職員や資格を持ちながら介護に従事した経験のない人を対象にした研修(基礎研修、体験研修)の実施、再就職先のマッチング。(潜在介護職員復職支援事業)
・東京都:
①介護事業者に対して職員宿舎の借り上げに必要な経費の一部を助成。(介護職員宿舎借り上げ支援事業) ②都内で働くすべての介護職員、ケアマネージャーを対象に、「居住支援特別手当」として月1万円または2万円を給付する。手当は事業所が介護職やケアマネジャーの給与に「居住支援特別手当」を設けた場合、都に申請することでその分の給付金が事業所に支給される。(居住支援特別手当事業)
・流山市(千葉県):
市内介護保険サービス事業者に勤務する介護職員等に、施設からの給与とは別に、月額9,000円の給与上乗せ額が流山市から補助される。(市から事業者に補助金を支給し、事業者から手当として支給)
・久御山町(京都府)
町内の介護事業所等で働く介護従事者(主に身体の介助に従事する職員(資格を問わない)、介護支援専門員、主任介護支援専門員、常勤の正規職員)に対して、町の独自財源で補助金を直接支給している。
・成田市(千葉県):
常勤の職員として直接雇用されている介護職員に対して、介護職員定着支援補助金(介護版なりた手当)を直接支給している。※3 2021年4月以降の居住介護支援事業所の管理者は、主任介護支援専門員であることが要件となったが、2021年3月末時点で主任介護支援専門員でない者が管理者である事業所は、当該管理者が管理者である限り、管理者を主任介護支援専門員とする要件の適用を2027年3月31日まで猶予されている。
※4 地域包括支援センター:
地域包括ケアシステムを形成する中核機関であり、各地域に設置される。高齢者一人ひとりに合わせて医療・介護・生活にかかわる最適なサポートを提示・指導していく拠点である。