重点継続課題
労働・社会政策
公共職業訓練の拡充と企業の教育投資に対する支援
DXやGXの進展への対応や介護など人手不足分野の改善のため、公共職業訓練におけるカリキュラムや訓練コースを充実させる。
また、短時間・有期・派遣労働者を含めた労働者に対する企業の教育訓練の責務を前提に、企業の教育訓練投資への助成措置や教育訓練給付制度の拡充に加え、有給の教育訓練休暇の普及促進と法制化を検討する。
勤続年数に応じて一定時間の公共職業訓練を受講できる権利の創設について検討する。
政府は2021年3月、「第11次職業能力開発基本計画」(2021~2025年度)を策定。デジタル技術の進展や職業人生の長期化などを踏まえ、企業における人材育成の支援と労働者の主体的なキャリア形成支援を柱に位置付けた。デジタル技術が進展し職業生活が長期化する中、労働者個人の自発的な学びに頼るのではなく、国の役割として職業訓練の体制整備が必要である。また介護分野など社会的要請の高い訓練コースを充実させ、人手不足を解消する施策が求められる。
企業には労働者教育の責務があることを前提に、企業による教育投資の促進(例えば、人材開発支援助成金の拡充など)が必要である。また、労働者個人の自発的な能力開発に対する教育訓練給付は、労働者が必ず一部を負担しなくてはならず、その助成は十分とは言えない。また、その財源は雇用保険であり、能力開発の需要が高まる不況時に財源が不足することが懸念される。企業の有給教育訓練休暇の制度化とあわせて教育訓練費を公費助成する仕組みの検討が必要である。
内閣府が行った「リカレント教育による人的資本投資に関する分析」(2021年1月26日公表)では、リカレント教育(学び直し)が収入(賃金)の増加につながる効果があるとの研究結果が示されている。日本では社会人が学ぶ機会が少ないと言われるが、さまざまな自己啓発を通じて新たな能力を磨けば、働き方の選択肢は広がり、老後の資産形成にもプラスになる
日本生産性本部の調査によると、日本の企業による人材教育投資は1990年代に約2.5兆円あったものが、年々減少し、2010年以降は約0.5兆円と低迷し、対GDP比でみても、アメリカ2.1%、イギリス1.1%に対して、日本は0.1%である。
イギリスでは、企業は「税」として在職中の労働者に対する教育訓練支援金を納めなければならず、その請求権には2年の時効が設定されているため「納付損」が起きないように従業員が早期に訓練を受けることを推進している。また、フランスの「職業訓練を受ける権利の時間数を蓄積する個人口座制度」(CPF)では、労働者の権利として一定時間数の教育を受ける権利を保障している。これらの事例を参考に、学び直しに資する制度の検討も求められる。