
重点継続課題
労働・社会政策
障がい者の就労支援と生活支援の充実
法定雇用率の引き上げを踏まえ、障がい者の採用から定着までの就労を支援するため、就職支援コーディネーターや職場適応援助者(ジョブコーチ)の周知、テレワーク普及促進、人材教育など、一貫したサポート体制を充実させる。さらに、障がい者を受け入れる企業の管理職や従業員向けの研修プログラムを充実させ、障がい者雇用に対する理解と実務能力を向上させる。
また、「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成を継続し、「サポーター意思表示グッズ」の着用や事業場で掲示できる器材作成などを通じて、精神障がい者等の就労に対する顧客、取引先等の理解を深める啓発活動を強化する。
障がい者雇用の質を向上させるため、障がいがある従業員をサポートする専門人材の育成やノウハウの蓄積に対する取り組みを支援する。
障害基礎年金、障害厚生年金の受給の等級統一、初診日要件の柔軟化を検討する。また、障害厚生年金受給者が就労すると年金が減額・停止されるケースがあることも踏まえ、障害年金と就労支援を一体的に進める制度改革を行う。
障がい者が安心して働き、安定した生活を送るために、住環境の整備、移動手段の確保、福祉・医療サービスの連携等の、就労支援と生活支援の一体的な取り組みを推進する。また、障がい者本人、家族、支援団体、雇用主、地域コミュニティなどの意見を直接施策に反映するための制度を構築する。
障がい者の法定雇用率は、2024年4月から2.5%、2026年7月から 2.7%に引き上げられる。しかしながら、2023年時点の実雇用率は法定雇用率をようやく上回ったものの、法定雇用率を達成している企業は全体の約5割にとどまっている。特に中小企業では達成率が低く、精神・発達障害者の雇用や職場定着が課題である
障がい者の雇用においては「就職できても続かない」現実があり、精神障がい者の平均勤続年数は約5年と、一般労働者の12年超と比べて大きく下回っている。障がい者の職場定着率を高めるためには、ジョブコーチなどの専門人材の支援体制の拡充とともに、企業内の理解促進が不可欠である。たとえば、「精神・発達障害者しごとサポーター」養成講座や、サポーター意思表示グッズの活用といった取組は、従業員のみならず顧客や取引先への啓発にも資する。
また、障がい者を「戦力」として捉える企業では、業績向上や職場の生産性向上、チームの協力体制の強化といったポジティブな効果も確認されている。単なる「社会貢献」ではなく、戦略的な経営資源として障がい者を位置づける企業も少なくない。
テレワークの普及やICT技術の進展も、職域拡大の大きな可能性を生んでいる。在宅勤務やロボット操作など、新しい形態の就労が拡がる中で、企業が柔軟な就労環境を整備することも重要なテーマである。
一方で、障害年金制度については、等級の不整合や初診日要件の厳格さが指摘されており、就労を希望する障がい者の経済的不安要因となっている。就労と年金支給の関係を見直し、就労を阻害しない一体的な制度改革が求められる。
さらに、就労支援とともに、安心して生活できる環境整備も欠かせない。住環境・移動手段・医療福祉の連携強化により、「働くこと」そのものが生活の質(QOL)を高めるものとなるよう、当事者の声を反映させた持続可能な支援体制の構築が必要である。