
重点継続課題
労働・社会政策
公共職業訓練の拡充と企業の教育投資に対する支援
DXやGXの進展に対応し、介護など慢性的な人手不足分野の改善のため、公共職業訓練におけるカリキュラムや訓練コースを充実させる。
特に、非正規雇用者や中高年齢者、女性、外国人労働者が参加しやすい柔軟な訓練プログラム(オンライン学習や短期集中型カリキュラムなど)を強化する。また、企業と連携した実践型リスキリング(OJT併用型職業訓練)を導入し、即戦力人材の育成を加速させる。
また、短時間・有期・派遣労働者を含めた労働者に対する企業の教育訓練の責務を前提に、企業の教育訓練投資への助成措置や教育訓練給付制度の拡充に加え、有給の教育訓練休暇の普及促進と法制化を検討する。
勤続年数に応じて一定時間の公共職業訓練を受講できる権利の創設し、労働者が定期的にスキルアップできる制度を構築する。
政府は2021年3月、「第11次職業能力開発基本計画」(2021~2025年度)を策定。今後、DX・GXをはじめ、気候変動対策、介護・福祉分野など慢性的な人手不足分野への対応が急務となる中、職業訓練制度の一層の充実が求められている。
日本では企業による教育訓練投資が長期的に低迷しており、日本生産性本部の調査によれば、1990年代に約2.5兆円あった人材教育投資額は、2010年以降は約0.5兆円にとどまり、対GDP比でも日本は0.1%と、アメリカ(2.1%)やイギリス(1.1%)と大きな差がある。こうした状況を改善するには、企業の教育訓練責務を明確化し、教育投資への助成制度を拡充することが不可欠である。
また、教育訓練給付制度についても、労働者の自己負担が前提となっていることから、学び直しの機会が経済的な理由で制約されている現状がある。制度の拡充にあたり、給付額の引き上げや財源の安定的確保、非正規・中高年齢者・外国人労働者など多様な就労者にも対応可能な訓練体系の整備が重要である。
さらに、内閣府の調査(2021年)では、リカレント教育が収入増に寄与することが示されており、労働者のキャリア形成支援としても有効であることが裏付けられている。労働者にとっては、定期的にスキルアップできる制度が、働き方の選択肢を広げ、老後の資産形成にも好影響をもたらす。
海外においては、フランスで導入されている「個人口座制度(CPF)」のように、勤続年数に応じて職業訓練の受講時間を蓄積する制度や、イギリスのように教育訓練支援金の納付と請求の仕組みを制度化するなど、企業・労働者双方の責務と権利を制度で担保している。こうした制度を参考にしながら、日本においても、有給の教育訓練休暇制度の法制化や、勤続年数に応じた訓練受講権の創設など、より実効性ある支援体制の構築が求められる。