
重点継続課題
労働・社会政策
介護保険制度の改革
介護保険制度の持続可能性を高めるため、現行制度の財政基盤の強化と給付の適正化を進めることで、介護保険制度の安定性と公平性を確保する。将来的には介護保険制度の被保険者・受給者の範囲を18歳未満を除くすべての医療保険加入者とするなど、加入範囲を見直し、負担の適正化を図るとともに、給付の重点化を進める制度改革を検討する。
現在の介護保険制度では、40歳以上の特定疾病患者および65歳以上のすべての者が介護サービスを受けることができるが、39歳未満は特定疾病になった場合でも、時間や回数制限のある医療保険内でのサービス利用となり、家族の生活負担や経済的負担が大きい。人生100年時代において、介護は高齢者だけでなく、若年層や中年層にとっても現実的なリスクである。40歳以上とされている介護保険の被保険者・受給者の範囲を、18歳未満を除くすべての医療保険加入者に拡大し、年齢にかかわらず必要な介護サービスを受けられる「普遍的制度」への転換を図ることが求められる。
また、障害者総合支援法と介護保険制度の関係についても、サービスの重複や利用者負担の不公平が生じないよう制度間の整理・統合を進める必要がある。
一方で、制度の持続可能性を確保する観点からは、現在の高齢化のピークを見据えた段階的な制度移行が必要である。2040年に向けて団塊ジュニア世代が後期高齢者層に達することにより、介護人材の不足はさらに深刻化することが予想される。介護職員の数は増加してきたものの、要介護者の増加スピードや生産年齢人口の減少スピードには追いついていない。これにより、人材確保や処遇改善、ICT・ロボット導入などによる生産性向上の重要性が高まっている。
また、介護保険財政についても、サービス給付の質を維持しつつ、限られた財源で制度を運営するには、現行の現物給付主体の仕組みから、現金給付との併用を含む多様な支給形態の検討も必要となる。現金給付は、ケアの柔軟性を高めるとともに、家族介護者への公正な評価や支援にもつながる可能性がある。
したがって、制度の抜本的な見直しには、利用者・家族・事業者・行政が共に支える「共助モデル」の強化が不可欠であり、その一環として、給付の重点化や被保険者の範囲拡大、制度間の整合性確保などを進めることで、持続可能で包摂的な介護保険制度の構築を目指すべきである。