重点継続課題
産業政策
食品ロス削減の推進およびフードバンクの普及促進
食品ロス削減に向け、食品関連事業者における納品期限、販売期限に関する運用ルールについて、小売業・卸売業・製造業などサプライチェーン全体の問題として、見直しを積極的に進める。また、賞味期限の年月表示の推進と消費者の食品ロスの削減に関する啓発を強化する。さらに、需要予測を高めるためのAIを活用した受注システム投資や、食品ロス内容を分析できる計量器の導入について支援を実施する。
フードバンク活動の普及促進に向け、農林水産省が策定した「フードバンク活動における食品の取り扱い等に関する手引き」の普及・徹底を行う。また、フードバンク活動団体が抱える課題を解決するために、地域において活動の関係者で構成する協議体の設置を促進するとともに、補助金支給等の支援を拡充する。加えて、企業の食品提供を促進するために、食品の安全衛生上のトラブルが発生した際の免責について法制化を検討する。
「食品ロス」は、もったいないだけでなく製造、廃棄にともなう多量のエネルギー消費により環境問題にもなる。
食品ロスの原因の一つは商慣習にある。小売店が設定する加工食品の納品期限は製造日から賞味期限の3分の1まで、販売期限は3分の2までとされており、期限を過ぎたものは返品・廃棄される(賞味期限が6ヵ月であれば、製造日から2ヵ月までに納品し、4ヵ月まで店頭で販売する)。したがって、納品期限を2分の1に緩和することにより食品ロスを削減できると考える。2017年に農林水産省より、卸売業者と小売業者の業界団体あてに加工食品の納品期限の緩和に関する通知も出されたが、小売業・卸売業だけでなく製造業も含めてサプライチェーン全体の問題として見直しに積極的に取り組んでいく必要がある。一方、賞味期限については、一部の企業の自主的な取り組みとして年月日表示から年月表示への転換が進められているが、さらに取り組みを進める必要がある。加えて、消費者の意識醸成も必要不可欠である。
フードバンク活動とは、包装の印字ミスや賞味期限が間近等の理由により品質に問題はないが通常の販売が困難になった加工食品や規格外の農産物等を、NPO等の団体が食品企業や農家等から引き取り福祉施設等に無償で提供する取り組みである。この活動の普及促進に向けて、フードバンク活動団体の抱えるさまざまな問題(食品の冷蔵・冷凍・保管設備の整備、車輛や運搬機器の確保、事務所の賃借、運営ノウハウの獲得等)を解決する仕組みが必要である。具体的には、地域において、フードバンク活動団体、食品の提供や物流にかかわる企業、行政等、関係者による協議体の設置を促進することが求められる。また、多くの活動団体は寄付金に頼る資金面で不安定な状況にある。この改善に向けて、現在農林水産省で実施している助成事業等公的な補助を拡充すべきである。このほか、安全衛生面のトラブルを危惧する企業の食品提供を促進する施策も必要である。アメリカでは事故発生時の責任免除の立法化、フランスでは寄付企業に対して税制上のインセンティブ(税額控除)を与えている。
食品ロス削減を進めるためには、需要予測を高めていく必要があり、経産省と気象庁においては天気・気温等を分析するシステム開発が進められている。現状、新しいシステム投資には投資コストが高くなる傾向があり、各企業における導入が進んでいない。また、廃棄物削減は資源の有効活用の視点から積極的に進めなくてはいけない。廃棄物の計量を進め、廃棄物の状況を把握することが求められる。一部の企業では、廃棄物の計量を進めることにより大幅な廃棄削減を実現している。食品ロス・廃棄物削減に向けた技術開発・設備導入への投資に対する補助金を導入する必要がある。