UAゼンセン重点課題
産業政策
カスタマーハラスメント(悪質クレーム)対策の推進
「サービス等を提供する側と受ける側がともに尊重される社会」の実現をめざし、一部の消費者による一般常識を超えた不当な要求や異常な態様の要求行為等のカスタマーハラスメント(悪質クレーム)の抑止・撲滅を推進する。
具体的には、国レベルでは「カスタマーハラスメント(悪質クレーム)対策基本法」を制定し、国全体としてカスタマーハラスメント(悪質クレーム)対策を推進する。また、労働施策総合推進法を改正し、カスタマーハラスメント(悪質クレーム)から労働者を守るための措置を事業主に義務づける。さらに、地方行政の取り組みを更に推進しするとともに、好事例の共有をはかる。加えて、労働組合が参画する仕組みの中で、業界ごとにカスタマーハラスメント(悪質クレーム)の実態調査と対策の研究を行い、カスタマーハラスメント(悪質クレーム)への対応や従業員教育の実施に向けたマニュアル、ガイドラインを作成する。
あわせて、倫理的な消費行動を促すための啓発活動や消費者教育を推進する。
人格を否定する暴言や同じ内容を何回も繰り返すクレーム、長時間拘束や土下座による謝罪の要求、威嚇・居座り等、明らかに一般常識を超えたカスタマーハラスメント(悪質クレーム)は深刻な問題である。コロナ禍において、流通・サービス業のエッセンシャルワーカーへのカスタマーハラスメント(悪質クレーム)はより深刻になっており、働く者に大きなストレスを与え精神疾患を招くだけでなく、働く魅力を阻害し働き手不足を招き、販売機会のロスや対応コストの負担により賃金の源泉となる企業利益を損なう。
2019年6月の労働施策総合推進法の改正で職場のパワーハラスメントの防止対策が盛り込まれたが、この法律に基づき策定された指針では、組織外・不特定多数を対象とする顧客や取引先等第三者からの著しい迷惑行為については、対策を講じることが「望ましい取り組み」との位置づけにとどまった。
したがって、カスタマーハラスメント(悪質クレーム)を抑止・撲滅するための実効性ある基本法の制定が必要である。また、労働施策総合推進法の5年後の見直し議論が2024年3月から有識者による検討会で開始しており、顧客や取引先等第三者からの著しい迷惑行為についても、事業主の防止措置義務に加え、実効性ある法整備を進める必要がある。あわせて、実態調査や対策の研究推進、企業におけるマニュアルやガイドラインの策定と教育の実施が必要である。なお、厚生労働省は、2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しており、その実効性を高めるためには、業界ごとの実態調査や対策の研究が必要であると同時に労働組合の参画が重要である。
また、カスタマーハラスメント(悪質クレーム)の問題が多くの産業(※)において起こっている社会的な問題であることを踏まえ、事業者との適切なコミュニケーションの方法や倫理的な消費行動を促す啓発活動や消費者教育を推進すべきである。
東京都や北海道、三重県等でのカスタマーハラスメント防止に向けた条例制定の動きや岡山市の消費者計画の策定など地方行政でのカスタマーハラスメント対策が進んでいるため、好事例の共有化をはかることも必要である。
※近年、他産別や連合等がカスタマーハラスメントに関する調査結果を発表している。 ・自治労:住民からの迷惑行為や悪質クレームの被害状況を公表(2021年8月) ・交運労協:鉄道、バス、タクシー、トラック、航空、観光などカスタマーハラスメントに関する調査を公表(2021年12月) ・連合:「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」を公表(2022年12月) ・NPO法人 北海道勤労者安全衛生センター:「2022年度カスタマーハラスメント(職場での迷惑行為・悪質クレーム)調査結果報告」を公表(2023年5月)