
UAゼンセン重点課題
労働・社会政策
外国人労働者の受け入れ体制の整備(地方自治体にも要請)
外国人労働者の受け入れに関する基本理念を法で定めたうえで、権利保護の強化、生活環境の整備、多文化共生の推進、日本語教育の機会拡充に係る総合的な政策を策定する。
外国人労働者の受け入れ制度や共生施策に関して継続的に審議する場を設置し、産業、地域労使との連携を確保する。
育成就労制度および特定技能制度の実効性確保に向けては、 制度所管省庁および業所管省庁において十分な予算を確保し、外国人労働者の権利保障とキャリア形成の確保にむけて、労働基準監督署、ハローワーク、技能実習機構(OTIT)等の大幅な体制および連携強化を行い、適正な受入れに関する指導・監督・支援を強化する。
とりわけ、「日本人と同等額以上」の賃金払いやパート・有期法の適用、その他労働基準関係法令の遵守状況について、集中的な監督指導を実施する。また、転籍、転職の権利が確実に行われ行使できるよう、外国人労働者、および受入れ機関、監理団体への周知を徹底し、転籍・転職を希望する外国人労働者への十分な情報提供を含めた公的な職業紹介機能を整備する。
各制度で求められる言語・技能水準を通じて、円滑なキャリア形成の観点から確認を行い、必要な支援策を整備する。特に日本語教育については、国が主導し公的な実施体制を拡充する。
育成就労制度、特定技能制度の分野別協議会および地域協議会は、労働組合や支援団体の関与を確保する。
深刻な人権侵害である入国前借金や不当な手数料徴収の撲滅にむけて、手数料の内容を明確化するとともに、ILO第181号条約の規定に則り、その支払いは外国人労働者に負担させない。定期的な実態把握を行い、送り出し国と連携し対策を講じる。
育成就労制度および特定技能制度の対象分野については、両制度の趣旨に照らして検討を行い、制度間の整合性をはかる。
外国人が安心して働き生活できる社会環境を整備するため、外国人在留支援センター(FRESC)の大都市圏への設置や「やさしい日本語」の使用および多言語化の促進、支援団体等との連携をふくむ、行政窓口における支援体制の大幅な拡充をはかる。また、外国人の円滑な銀行口座の開設にかかる金融機関、使用者に対する要請の強化、就学や進学において日本語指導が必要な子ども向けの教育体制の強化、および外国人労働者の年金権確立にむけて、主要送り出し国との社会保障協定締結を進める。
外国人労働者の責任ある受け入れにむけては、労働条件の改善や生産性向上の取り組みを検証する基準・手続きを導入し、国籍を問わず労働条件が向上する労働市場の形成を行うべきであり、人手不足への対応は技術革新による生産性向上を基本に進める必要がある。
しかしながら、外国人労働者を受け入れる事業場における労働基準関係法令違反は後を絶たない。UAゼンセンに寄せられる労働相談からは、いまだ外国人労働者を「安い労働力」として取り扱う事例も散見され、不当な扱いを受けた外国人労働者が、行政機関の連携不足により困難な状況に陥る事態もある。国においては、監督指導を集中的かつ厳格に行うべく、外国人労働者の事案に特化した監督官を配置するなど体制を強化するとともに、外国人労働者の人権を中心に据え、関係機関の連携を構築すべきである。
日本で働く外国人の数は2023年末に204万人を超え、総人口に占める在留外国人の割合は3%近くに達している。今後、特定技能2号での就労を希望する労働者も増える可能性が高く、在留期間の長期化や定住者の更なる増加も見込まれる。2023年3月に公表したUAゼンセンの「外国人労働者の雇用・生活状況に関する調査」によると、労使ともに高い割合で現在日本で働いている外国人がより長く滞在できるよう求めており、労働者の中には、家族の帯同を希望する者も多い。
多様な文化背景を持った労働者やその家族が共に安心して働き、生活し、人生設計を描けるよう、法令や施策を整備していく必要がある。なお、外国人労働者が労働組合を通じ当該議論に参画することは、より良い受け入れ制度や共生施策づくりのみならず、日本の社会・経済の活性化にも効果的である。日本人労働者と同様に集団的労使関係のもと自らの労働条件を使用者と交渉できるよう、「ビジネスと人権」の観点も踏まえ、外国人労働者および使用者の双方に労働基本権と労使対話の重要性を周知し、環境づくりをしていくことが求められる。
政府は、2024年通常国会で現行の技能実習制度に代わる育成就労制度を創設した。2025年3月には特定技能制度及び育成就労制度の基本方針が閣議決定されたが、2回の議論で取りまとめに至っており、内容の適正性に懸念が残る。
特に、送り出し機関に支払う手数料は月給の二か月分を上限とする案が示されているが、その内訳を示すと共に、例え国境をまたいだ職業斡旋であるとしても、日本で就労するのであるから職業斡旋に係る手数料は労働者に負担させないことを基本理念とすべきである。そのうえで、定期的な実態調査、二国間覚書の再締結、「ゼロ・フィー・プロジェクト」の推進により、その撲滅にむけ不断の取り組みが求められる。
当初1年とされた転籍制限は当分の間1~2年とする旨が示されたが、「当分の間」の年限、そして具体的にどの様に「1年を目指す」のか示す必要がある。
新たな育成就労制度および特定技能制度では一定の日本語能力試験への合格が要件として導入されている。外国人労働者の権利保護とキャリア形成において、一定の日本語能力を求めることは適正だが、主な送り出し国における日本語の教育施設は都市部に限定され、日本国内での教育機会として想定されている認定日本語教育機関は、現時点で13の自治体(22機関)にしかなく、「就労」課程を認可された機関は現時点で1つもない。日本語教育に係る体制は脆弱と言わざるを得ず、大幅な拡充が求められる。
出入国在留管理庁「外国人住民の受入れ及び共生に関する自治体アンケート(令和4年度)によれば、外国人の生活に関する総合的な対応を行う専門部局が設置されている自治体は全体の47%にとどまっている。在留資格によらず総合的な支援を行う公的窓口の拡充や地域における支援団体等との連携強化、多言語化、やさしい日本語の使用、SNSの活用等により、不安を抱える外国人労働者も相談しやすい体制づくりが求められる。なお、銀行口座の開設で困難に直面する外国人が後を絶たない。日本で就労する外国人労働者が速やかに口座開設が行えるよう、対策を強化すべきである。
文部科学省の2021年度の調査では、日本語指導が必要な児童生徒約5万8千人のうち3割強が「指導者がいない」といった理由で日本語の授業を受けていない。また、日本語の壁に直面し、高校進学が叶わず、不安定な職に就かざるを得ないケースもある実情を踏まえ、日本語教育が必要な子どもに対する体制をさらに整備する必要がある。
UAゼンセンには、脱退一時金制度に関する相談が外国人労働者、使用者双方から寄せられており、主な送り出し国との社会保障協定の締結が急がれる。